主人がオオアリクイに殺されて1年が過ぎました。


いきなりのメール失礼します。
久光さやか、29歳の未亡人です。
お互いのニーズに合致しそうだと思い、連絡してみました。


自分のことを少し語ります。
昨年の夏、わけあって主人を亡くしました。
自分は…主人のことを…死ぬまで何も理解していなかったのが
とても悔やまれます。
主人はシンガポールに頻繁に旅行に向っていたのですが、
それは遊びの為の旅行ではなかったのです。
収入を得るために、私に内緒であんな危険な出稼ぎをしていたなんて。


一年が経過して、ようやく主人の死から立ち直ってきました。
ですが、お恥ずかしい話ですが、毎日の孤独な夜に、
身体の火照りが止まらなくなる時間も増えてきました。


主人の残した財産は莫大な額です。
つまり、謝礼は幾らでも出きますので、
私の性欲を満たして欲しいのです。


お返事を頂けましたら、もっと詳しい話をしたいと
考えています。連絡、待っていますね。

毎日数十件のスパムメール
Gmailのスパムフィルタは異常に優秀なので、
受信トレイのスパムを削除する手間がほとんどない。
と言うか皆無だ。

この手のメールって確率の問題で、一定の人数に出せば、必ず何%かの確率で引っかかってくるらしい。だから無くならない。
このメールを出す仕組みは、よくわからんが、ネット上をクロールしてアドレスを拾って来てどんどん送付するみたいに、自動化なってるんだろうから、先数の多少で手間は変わらないと思う。
まして、スパムフィルタなんかも進化するんだろうから、色々とスパム業界(?)の人も考えるんだろう。


それでだ、この「オオアリクイ」メールも迷惑メールフォルダに入って来たわけだ。

これはもうヤミ商売としてではなく、完全に見込み客にメールを開かせるための件名と文章を作るのが楽しくなって作品紹介の方向に向かっているに違いない。書いた人は。

これからは、スパムメールを作品紹介の場とする新しい小説かなんかも出てくるかもしれない。
スパム業者お抱えのスパム構成作家とかスパムディレクターなんかが出て来たりもして。

レコードジャケットのアートワーク作品集みたいな本があるように
スパム作品集本も発刊。
苗場でスパムポエトリーリーディングイベント開催。
毎回海外からビッグゲストが訪れる。
ドラマ化も必至だ。